ドリアンは食べたことがない人には、かなりハードルが高いフルーツだが、なれてしまうと別格になる。
他のフルーツは食べなくてもいられるが、ドリアンだけは、シーズンに入ると必ず食べなければならないほどの魅力がある。インドネシアでは musim Durian(ドリアンの季節)と暦が謳われることからも、いかにドリアンが珍重されるかがわかる。
ドリアンの種類は豊富で、近代では交配種の高級なものも出回る。インドネシアはあまり熱心ではないが、マレーシアでは農政省の品種改良のレベルが高く、いくつも新種のドリアンを開発している。
市場に出回る品種の中でも、特に高級で価格の高いものは「猫山王 Mu Sang King」ムーサンキンと言う品種で、普通のドリアンの3倍~5倍程度の価格帯で店頭に並ぶ。
2024年度は収穫量が少なかったのか、異常な高値で出回っていたが、2025年度の出来はまずまずの様子。


クアラルンプールのドリアン専門屋台から送られてきた写真 2025年1月22日
これまで、マレーシアにはビザ更新の関係で、10回近く行き来しているが、たった1回だけお目にかかったドリアンは「黒棘猫山王 Black Thorn」ブラック・トーンと呼ぶ品種で、普通のドリアンの5倍程度の価格。当時の店頭価格で2400円/kgだった。
どれくらい値打ちが高いかというと、マグロが450円/kg、最上位の米150円/kg、青唐辛子の高値時1000円/kg(インドネシア、マレーシアでは唐辛子抜きで食事ができない民族)
おそらく、日本に輸出すると、店頭で1個が6~8万円程になるかもしれない。
お味の方はいかがかと言うと、普通のドリアンの3倍以上の濃厚な味、身の量も2倍以上が詰まっている。
ドリアンは総じて、過食部分よりも種子のほうが大きいが、この品種は種が小さい、若しくは収縮しているので、実の部分が多い。おそらく、受粉時にジベ処理をしているのではないかと思われる。
ちなみに、ドリアンはトゲトゲの外皮が全体の50-60%を占めるため、なるべく熟成が進んで乾燥している軽いものを選ぶのがコツでもある。
プレテスト
地元にあるドリアン専門店で購入した、比較的上質のマルチーズ種(480円/kg)を発芽させて見た。
ドリアンの種は、他の果物に比べると非常に大きい。アボカドの種の次に大きいのがドリアンで、種が大きいということは、発芽して双葉が出るまでに使うエネルギー量が大きいことを意味する。発芽の段階で、大量の養分を必要とするということは、幼木の期間でも大量の養分が必要ということになる。
実際、ベトナムではドリアンの種を茹でて食べさせてくれたが、里芋と同じ味がして、粘りがものすごく強い。ということは、カリウム、ガラクタン、グルコマンナンなどが豊富に含まれているだろうということが推測できる。
![]() | 2025年1月17日 水洗いしたドリアン・マルチーズの種子を1週間、屋外の発芽床に置いて発芽を確認。発芽率100%。F1ではなく在来種だった。 |
![]() | 2025年1月27日 雨 気温;26℃ 苗床に移して10日、根の育成状態が良い。 |
![]() | 2025年2月1日 曇り 気温;29℃ 幹になる部分が伸びてきた。あと1週間ほどで新芽が出てくる。 |

ドリアンに興味を持ったのは、その食感と市場価格だった。去年、マレーシアでムーサンキンを食べたことをAgus氏に話したところ、義理の母親がその苗木を買ってAgus氏と大家(現在住んでいる建屋)にそれぞれ与えた。Agus氏の家の庭に移植されたムーサンキンの苗木は、1年近くなっても元気な葉が茂ることなく断念された。
大家の移植したものは、若干の新葉が出てきたものの、幹も枝も成長せず、ほとんど1年前の状態を保っている。

Agus氏が移植する前に、こちらで事前調査して情報を渡してあったが、特に準備することなくそのまま植え付けられて、あえなく終了した。
事前調査していた内容と、この実例から判断して、ドリアンの栽培は肥沃な土壌とかなり高度な栽培技術がいるのではないか?という考えに至った。
それと同時に、ドリアンが結実するまでの年数には5年単位程度の遅速があり、産地や品種等によっても大きさ、品質がバラバラであることがわかってきて、このばらつきは、近所で売られている野菜、果物にも同じことが言える。
日本の国内産の野菜や果物は、いつどこで買っても、だいたい同じ味と品質で味もそれほど変わらない。これは農業技術と肥料、農薬について厳密な適用方法が農協を通じて全国に浸透しているからで、逆に言えば、本来のダイナミックな野菜の味ではない。
東南アジアの国々では、農協のような仕組みはない。耕作で化学肥料を使うのは日常的になっているが、農家でもある程度、資金繰りができる家に限られ、これはミャンマーでは特に顕著である。したがって、肥料をやれる家もあれば、一方では自分の家族が食べるのが精一杯で、畑に肥料をやれない家がある。これだけでも、作物の品質を左右し、加えて、土壌の管理となるとかなりハードルが高くなる。
故に、味と品質にばらつきが出るのは当たり前ということになる。
ドリアンの祖先はカカオで、どちらもジャングルの中に自生していた。
今でも、ドリアンの季節にスマトラ島のジャングルに入ると、枝という枝にはドリアンの実が鈴なりになっているという話を、チャーターしたドライバーから聞かされたことがある。
いずれ、スマトラ島に行って、そのことを確かめてこようと思っている。
もともとジャングルに自生している時、人が肥料を与えているわけではなく、山の土壌そのものが育成する養分を持っているということである。
このことを考えていたとき、もう30年以上前に行った岩手の三陸海岸沿いの渓流を思い出していた。
東北の渓流や山の状態は関東のそれとは比較にならないくらい、自然が豊かである。
ほぼ手つかずの谷の斜面を降りてゆくときに足が太ももまで埋まったことがあったが、地面を見ると、黒い土がフカフカに積もっていた。また盛んに発酵しているのか、掘り返すと暖かく湯気が出ていた。
つまり、山の中では養分として枯れ葉の堆肥を得ていること、そして適度な間隙があって空気が入ることで湿気が適度に保たれる。このような環境があれば、自然に育って結実する。
スマトラ島のジャングルでも概ね同じことが起きているのだろうと考えるに至る。
そこで、この山で起きる養分の生成と保水、土中の空間のモデルを目指す。
![]() | 2025/02/04 晴れ 24-34℃ 新芽の双葉になる緑がかった部分が露出してきた。 ポットの排水状態が悪いため、底に複数箇所の穿孔処理。蒸散を促進するディンプル処理。 |
![]() | 2025/02/07 晴れ 24-33℃ 新芽の部分が伸びてきた。 黒刺蟻が種の中に入って、胚乳をかじっている様子。新芽と外殻の境目にある黒い土は、蟻の排泄物かと見られる。 そのままにしておく。 |
![]() | 2025/02/13 曇り/雨 24-30℃ 新芽の成長点が出てきた。完全に殻から出てくるまで、今しばらくかかる。 |




![]() ![]() | 2025年2月16日 24-32℃ 薄曇り/雨 種子の外殻が浮き上がって、幹が垂直になる過程。外殻から枝葉全体がどのように露出するか。黒刺蟻は種子の中に入ってしきりに胚乳を食べている様子。 |
![]() | 2025年2月18日 22-31℃ 晴/薄曇/時雨 昨日の午後、種子の部分脱落。明らかに虫害。 |
![]() ![]() | 虫害の調査結果; コナカイガラムシ。 種子内部に入るケースは珍しい。 |


苗の先端を切り、黒棘の脇芽を移植、接ぎ木した。1週間後に接合部がつながって新芽が伸びれば成功。
2025年2月21日(金)
残念ながら接ぎ木は失敗、早すぎた様子。


最後まで外殻を保持していた種子から、外殻を引き離してみたところ、幼葉が出てきたので様子を見る。
2%木酢酸溶液を地表面にスプレー。













